ワシントン・ポスト紙2006年11月23日報道の紹介
EPA 銀ナノ粒子殺菌剤製品を規制する

情報源:Washington Post, November 23, 2006
EPA to Regulate Nanoproducts Sold As Germ-Killing
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2006/11/22/AR2006112201979.html

紹介:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2006年11月24日


 2006年11月23日付けワシントン・ポスト紙は、米環境保護庁(EPA)は、予測できない環境リスクを及ぼすかもしれない銀のナノ粒子(ナノ銀)(訳注1)でできた広範な消費者製品を規制することを決定したと報道した。以下に、その概要を紹介する。

 この決定は、靴の中敷、食品保存容器、エアーフレッシュナー、洗濯機などナノ銀殺菌剤によりハイテク消臭効果を持たせた製品に影響を与えるもので、従来のアメリカ政府の政策を大きく方向転換するものである。それはナノ技術に対する予測できない規制のハードルができることを意味する。

 今までナノ銀殺菌剤でできた新製品は規制の審査を受ける必要がなかったが、大量のナノ銀が下水を通じて環境中に放出されることにより、有益なバクテリアや水生微生物を殺し、また人間にもリスクを及ぼすことを環境保護者らは懸念していた。

 ほとんどのナノ物質はこのEPAの新たな決定の範囲外であるが、専門家らはこの動きは物質科学と医療に大きな技術的革新もたらすナノ技術に対する初めての大々的な連邦政府の制限であると述べた。

 これはテストケースのようなものだとウッドロー・ウィルソン国際センターの主席科学顧問アンドリュー・メイナードは述べた。”このような特定の事例が既存の規制へのアプローチが適切なのかどうかの決定を明確にするために役に立つ。”

 ナノ銀の放出又は関連技術により細菌を殺すど主張する製品を市場に出したいと望む会社は、その製品が環境リスクを及ぼさないという科学的証拠をまず出さなくてはならない。

 最終的な規則は数か月以内に連邦官報で告知されるが、EPAの監視、は殺菌剤(germ-killing)であると広告している製品だけに適用されるので、害虫(微微生物を含む)を殺すと主張しなければ、農薬ではないのだからEPAは関知しない。

 最近までナノ銀を含む抗菌剤製品を宣伝していた通販会社シャーパー・イメージ(Sharper Image)は、市場に出している製品からそのような宣伝文句を全て引っ込めた。

 それは、大きな法の抜け穴のように聞こえるの、多分、法廷に持ち込むことになると、EPA9にナノ銀を規制するよう働きかけてきた天然資源防衛協議会(NRDC)の弁護士は述べた。

 サムソン製のナノ銀洗濯機は銀の微小帯電粒子を洗濯水中に放出することにより冷水中の衣類を消毒すると主張しているので、EPAは数年来、特別の注意を払っていた。

 サムソンは、同社のナノ銀洗濯機は非常に微小で不活性な銀を環境中に放出するが、EPAとよく協議しして適用法規に完全に従うと述べた。

 約1年前、EPAは、そのような製品(洗濯機)はネズミ捕りのようなもので、市場に出す前に審査の必要な農薬とは異なるとして、EPAの主要な規制ツールである連邦殺虫剤殺菌剤殺鼠剤法(FIFRA)の対象にはならないであろうと述べていた。

 しかし、カリフォルニアの廃水処理プラントの技術支援グループ Tri-TAC の議長は、水生生物に有毒な水が廃水処理プラントから排出されるなら問題であるとし、EPAに”銀は低濃度であっても水生生物に非常に有毒であり、ハマグリのような水生生物に生体蓄積する”という書簡を送った。

 他の団体からも強い圧力があり、EPAは再考することに決めた。EPAは、”銀イオンの放出を対象とする。それは農薬であり、(ネズミ捕りのような)仕掛け(device)でないことは明らかである”と述べた。


訳注1:
ナノ銀・ナノシルバーとは/ナノテクによる殺菌・抗菌剤 銀ナノ・ナノシルバーコロイド・溶剤について



化学物質問題市民研究会
トップページに戻る